桃太郎

金坊、黙って聞け！

【あらすじ】
父親が息子の金坊を寝かしつけようと、枕元で「桃太郎」を語り始めますが、生意気な金坊は黙って聞いていません。「むかしむかし…」と言えば「何時代？」「あるところに…」と続けようとすると「どこ？郵便番号は何番？」。あげくの果てに、父親に向かって「この話は日本三大昔話のひとつで、深い教訓がこめられているんだよ？　そのことわかってる？」と諭し始めました。

【聞きどころ】
文左衛門師匠は、「前座噺」といわれるような噺をひょいと高座にかけて、ひと味ちがうものを聞かせてくれる噺家さんですが、この「桃太郎」もそのひとつ。最初は優しく息子に語りかけ始めた父親が、茶々を入れる金坊に、しまいには「黙って聞け、この野郎！」と迫力たっぷりにキレるところなど、師匠のキャラが生きています。

【もうひとこと】
金坊の解説に負けず劣らず、民俗学者・柳田國男は、『桃太郎の誕生』の中で昔話「桃太郎」の背後には「小さ子」の物語など、神話的な世界があると指摘しています。柳田は「桃太郎」は英雄伝説が変形した一つの姿で、古代ローマのミトラ教神話など、同類型の話が日本以外にも存在するということです。

［収録：2010年3月16日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）］

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