粗忽の釘

壁に掛けるのは、エキス＊＊＊ー

【あらすじ】
ひどいあわて者の男が引っ越ししました。荷物を運ぶうちに引っ越し先を忘れてしまったので、元の大家に連れてきてもらった、という粗忽ぶり。男は荷物を解いていた女房に壁に釘を打ってくれと頼まれます。ところが大工であわて者、壁に八寸もある瓦釘を打ち込んでしまいました。薄い長屋の壁を突きぬけてお隣がケガでもしていたら大変です。あやまりに行かなくてはいけません。ところが男は、なぜか通りを隔てた向かいの家を訪ねます。「いや、それは、うちじゃないような気がする……」。改めて隣家に行ってみると、住人は無事でしたが。

【聴きどころ】
ご存じの通り、一般的にこの噺で女房が頼むのは、箒を掛ける釘を打ってくれ、という設定です。ところが鯉昇版では、女房が壁に掛けたいから、と頼むのはなんと体力作りのための、なんとなく懐かしい健康器具。鯉昇師匠らしい、いたずらです。向かいの家の住人が変な男におびえて戸惑う姿にも師匠らしい演出が光ります。

【もうひと言】
「粗忽長屋」「粗忽の使者」「堀の内」などと並んで代表的な粗忽噺。原話は文政13年の上方板「噺栗毛」の「田舎も粋」。

[収録：2010年9月18日　フジテレビ・シアターモール内マルチシアター（東京・台場）]

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