死神～クリスマス版

人類の歴史にかかわる壮大な物語・白鳥版「死神」

【あらすじ】
「人の命はお金じゃ買えないんだ！」大学病院の医者だった男は正義感が強く、金儲け主義の病院の方針に逆らったので病院をクビになってしまいました。しかも「金を稼がないあんたには何の価値もない！」と、妻のさち子にののしられる男。自殺しようとしますが、死神に助けられました。死神を消してしまう呪文を教わった男は、瀕死の病人を助けては大金をもらうようになり、いつの間にか金の亡者になってしまいます。しかも無理矢理に人の寿命を変えてしまうことで死神界の怒りを買い、夫婦には過酷な運命が待ち構えているのでした。

【聞きどころ】
古典に新しい息吹を与えるのを得意とする白鳥師匠が、ムチャクチャといっていいほどにアレンジしています。時代も現代に置き換えられていますが、主人公の奥さんが強力です。美貌だけれど子供時代に貧しくて「蛸とり」の仕事をして苦労した彼女はお金への執着が強く、そのパワーは旦那だけでなく死神も、そして人類の歴史まで巻き込んでいきます。クリスマスを噺に織り込んでみせ、人類創生に関わる壮大な驚きのサゲが用意されています。

【もうひとこと】
明治中期に三遊亭円朝が、なんとイタリアのオペラにヒントを得て作った噺だそうです。昭和の名人・六代目三遊亭圓生の人間の欲望をシニカルに見つめた口演が有名です。これを破天荒な物語にした白鳥師が、圓生の孫弟子に当たる…と考えると、演目が演目だけに、これも何かの因縁でしょうか。

［収録：2009年12月15日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）］

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