大満読誦のご修行～節談説教

若き日の親鸞聖人～伝説(フィクション）は史実(ノンフィクション）を超える

【あらすじ】
これは親鸞聖人の年若き頃のお話。後に親鸞となる松若丸は九歳という弱年で比叡山に登って出家し、範宴坊（はんえんぼう）という名を頂き修行に励んでいましたが、たちまちの内に頭角を現し文殊の再来と呼ばれるほどの秀才ぶりを示すようになりました。けれども、衆の中で抜きん出る人物は嫉妬されるのがこの世の習い。このままではあの範宴坊が叡山の座主となり、他の僧侶は範宴坊の下につかねばならない、こればかりはどうあっても避けなければならないと叡山三千坊の僧が悪知恵を働かせ、範宴坊に百日の断食という荒行をやらせるよう働きかけます。もしも無理をしてこの荒行を行えば死ぬのは必至、そしてこの荒行を拒めば範宴坊は叡山を降りねばなりません。そこで範宴坊はこの荒行を行うと決心し……。

【聴きどころ】
説教は仏教の布教のために行うもので、説教師にとってはあくまでも宗教的行為なのですが、芸能の側から見れば説教は現代の落語、講談、浪曲、浄瑠璃などの元祖に他なりません。『枕草子』にある有名な「説教師顔よし(説教師は顔がよいのがいい）」という文句を挙げるまでもなく、説教は仏教の本義を学ぶものであると同時に娯楽でもあったのです。宗城師の節談説教は親鸞の業績を讃えると同時に極上の語る芸ともなっています。

【もうひと言】
この節談説教の中で親鸞こと範宴坊は見事百日の断食を成し遂げます。藤野宗城師は百日の断食など現在の医学的見地からすればあり得ないことだが、これはあくまでも伝説であり、こういう伝説が生まれるところに親鸞聖人の徳の高さが表れている、と言っています。おそらくこの伝説は親鸞が百日の間六角堂に参籠して自力から他力へと信仰を変えた史実を元にして出来上がったものなのでしょう。ですが、私たちに必要なものは単なる事実よりも、事実を超えた何かであることを昔の人たちは知っていました。ですから、このような伝説が生み出されたのでしょう。

[収録：2008年11月6日　放光山閑栖寺（滋賀県大津市）]

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