化物使い

口やかましい爺が似合う文左衛門

【あらすじ】
本所割下水に一人住まいの吉田さんという御隠居は人使いの荒いことで評判です。奉公人を雇っても、どんな人でも三日ともちません。そこへ働きに行こうと自ら名乗り出たのが杢助でした。杢助は頑固者の御隠居が驚くほどの働きぶりで、御隠居をよろこばせますが、それから三年後のある日突然仕事を辞めたいと言い出します。理由は御隠居の人使いが荒いことではなく、今度引っ越すことになった屋敷に化物が出るという噂があるからでした。そこで隠居はたった一人でその化物屋敷へ引っ越すことになったのですが…。

【聴きどころ】
落語界の中ではまだ若手の中に分類される文左衛門師ですが、どういうわけか文左衛門師描くところのお年寄りには不思議な味わいがあります。この噺の主人公である口やかましい老人もその例に漏れず、文左衛門師が演じると偏屈な中にも憎めない愛嬌が漂います。一見荒っぽく見せながら、そこに男の可愛らしさがにじみ出るというのは、実は文左衛門師のキャラクターそのものとも言えるでしょう。やはり偏屈でありながら可愛らしいお年寄りの登場する「笠碁(文左衛門演）」もラジオデイズで配信中です。興味のある方はぜひこちらも。

【もうひと言】
よく「人使いの荒い」人がいますが、その人は本当は人使いが荒いのではなく、単に「人使いに無駄がある」だけだったりします。その違いを「化物使い」に登場する杢助が絶妙に指摘してみせます。人を使う立場にいる人には貴重なアドバイスとなるかもしれません。

[収録：2009年11月22日　池袋演芸場（東京）]

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