狸の札

狸の恩返し

【あらすじ】
「んばんわ、ぁぬきです」。夜更けに外から聞こえる妙な声に、親方が不審に思いながら戸を開けてみると、そこには子狸がいました。昼間、人間の子供たちに苛められていたところを助けられたので、親方に恩返しがしたいとやってきたのでした。「いいよ、恩返しなんて」という親方ですが「そうはいきません、恩を返さないと“まるで人間と同じだ”と仲間に苛められます」と狸がいうので、一晩泊めることにします。翌朝、狸が小僧に化けて朝ご飯を作ってくれる気の効きように、親方も喜びます。その日、呉服屋に借金を返さなければならなくて親方が困っていることを知った子狸は「あたいがお札に化けましょうか？」というではありませんか。

【聴きどころ】
前座でよくかかる、かわいらしい趣の噺です。こみちさんの明るい張りのある声が、子狸の愛らしさを思わせます。最初は子狸のことを持て余していた親方が、次第に情が移ってくるところも聞きどころ。こみちさんは、師匠・燕路師のハムスターの世話をしているとのこと。その経験が生きているのかもしれません？　民話のような噺ですが、サゲは落語らしく締めくくります。

【もうひと言】
狸が恩返しするという話は、狸がさいころに化ける「狸賽」、若旦那に化けて吉原に行く「狸の遊び」などいくつかあり、これらが連続して一つの噺として演じられることもあります。狸やキツネが登場する噺が多いということは、かつては人間に近しい動物だった、ということでしょうか。

[収録：2007年8月10日　ライブカフェAGAIN（東京・武蔵小山）]

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