子別れ

子が取り持つ親の縁

【あらすじ】
かつて大工の熊は酒癖が悪く、3年前に女房のおみつと息子のかめを追い出してしまいました。吉原の遊女を家に入れたのですが、女は出て行ってしまい今では独り暮らし。女と別れた熊は酒もやめて真面目に仕事に励んでいます。そんなある日、熊は偶然にもかめに出会います。大きくなったかめに目を細める熊。聞けばおみつは再婚もせず、女手一つでかめを育てているとのこと。熊はかめに小遣いを渡し、翌日ウナギをご馳走してやろうと約束をして別れます。今日あったことは内緒の約束なのですが、かめが家に帰ると、おみつにその小遣いを見つかってしまいました。

【聴きどころ】
数ある江戸人情噺の中でももっとも有名な噺の一つです。カギを握っているのは子どものかめの描写で、別れた夫婦の複雑な感情を小生意気に読みとっているかめの言葉が、意地を張る親たちの心を解かしていきます。ややもするとあざとい感じになってしまう、けっこう難しい役どころですが、歌之介師匠の人柄のおかげか、自然に可愛らしく聞こえます。

【もう一言】
この噺は本来は長く、上中下に別れています。酔っぱらいで遊び人だった時代の熊が、吉原に居続けした揚げ句におみつたちを追い出すまでが、上・中で「強飯（こわめし）の女郎買い」・「子別れ」、そして夫婦がよりをもどす下を「子は鎹（かすがい）」と呼ぶこともあります。かすがいは大工が使う、大きな木材をつなぐためのコの字型の金具のこと。幕末の初代春風亭柳枝作とされています。

[収録：2010年4月10日　フジテレビ・マルチシアター（東京・お台場）]

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