銀河の恋の物語

星に願った七夕の夜

【あらすじ】
七夕の夜。ある家族が笹飾りの短冊に願いを書いています。「パチンコが出ますように」「ノートパソコンが欲しい」などなど、短冊に小さな願いを込める一家でありました。おりしも夜空には流れ星。年頃の娘は星に何かをお願いしたようです。一方、そこから数万光年はなれた宇宙の彼方では、今まさに織姫が彦星に会うため、銀河を手こぎボートで横断中。ふたりは年に一度のデートを兼ねて、七夕の願い事の選考会議を開くのです。人々の願いは身勝手なものがほとんど。なかなか織姫さまの心の琴線に触れるようなものがありません。やっと彦星が見つけてきた短冊はくだんの家族の娘のもの。少女らしいかわいらしい願いは、七夕にふさわしいように思えました。がしかし、なぜだか織姫にはその願いをかなえる気がないようなのでした。

【聴きどころ】
星の噺となれば、天体観測マニア小ゑん師匠の独壇場。星ネタは他の噺家の追随を許さないものがあります。しかし小ゑん師匠の新作落語の魅力はオタクな世界でだけ発揮されるものではありません。家族の小さな幸せや、少年少女の心の揺らめき……ちょっぴりメルヘンに彩られたやさしい世界の描写もまた師の新作の魅力。本作のサゲでも、その温かい視線に、心がきゅんとすること間違いありません。

【もうひと言】
「星空寄席」で有名な小ゑん師匠。マクラでは2009年7月、天候不順のなか奇跡的に見ることができた上海での皆既日食談義が堪能できます。また「科学する落語家」の面目躍如とばかりに電卓を駆使した織姫と彦星の逢瀬の頻度の計算結果には、だれもがびっくり！　七夕と月の船の蘊蓄も聞いておいて損はありません。

[2009年8月29日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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