お見合い中

絶妙に“笑いの間”を演出する至高の話芸　（落語随談付き）

【あらすじ】
86回お見合いをして全部断られてきた30歳のジミカワテツオさんは、母親のすすめでまたお見合いをすることになりました。相手はハデヤマさん。指定された店に行ってみると、赤い着物に赤い帯、赤い草履に赤い足袋、赤い髪に赤い唇の派手な女性が待っていました。さっそくお見合いが始まりますが、ハデヤマさんの質問に答えるジミカワさんとはことごとく合いません。「好きな音楽は？　私はクラシック」「僕は炭鉱節と北海盆唄」、「私はシャネルが好き」「僕はユニクロ」、「私はブランデーが好きだけど」「僕はヤクルトとファンタ」……。落語家の話題でも、小さんと高三、円歌と演歌、志ん朝と身長を勘違いするなどずれっぱなし。あげくに談志は？　と聞かれて女子のほうが好きですと答える始末。87回目のお見合いもやはり失敗かと思われますが、ハデヤマさんはジミカワさんの正直なところが気に入り、結婚してもいいといいます。そこでふたりはさらにディープな領域へと会話を進めるのですが……。

【聴きどころ】
まくらも含めて全編ダジャレに満ちていますが、桃太郎師は声の強弱や話すスピードを変えたりせず、またオーバーなしぐさや表情を変えたりせずに、たんたんと語り続けます。それで独特の“間”とネタの内容だけで会場を爆笑させる。もはや名人芸以外の何ものでもないでしょう。

【もうひと言】
まくらで、今をときめく弟弟子の春風亭昇太師のことや、半年ぶりに振ってみたという小ネタについて語っているときなどに、ネタなのか師の本音なのかわからないフラが出ていて興味深い一席です。

〔収録：2007年6月28日　東京・お江戸日本橋亭〕

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