火焔太鼓

ずらり並べた三百両のカタルシス

【あらすじ】
商売ベタな道具屋は、いつも変なものを仕入れては女房にしかられてばかり。きょう手に入れた古い太鼓も、ホコリのかたまりだと馬鹿にされるしまつです。しかし小僧に太鼓をそうじさせたところ、はたいただけで、太鼓は良い音で鳴り響きます。そこへ武士がやってきて、太鼓の音色を聞いたお殿さまが、お屋敷に太鼓を持って来いと言っている由を伝えました。どうせお仕置きされるのが関の山という女房をあとにお屋敷に出かけた道具屋は、いつ後ろ手に縛られるかと内心びくびく。しかし思いもかけず太鼓には三百両の高値がついたのでした。そして家に帰った道具屋は、売り上げの小判をどうだとばかり、女房の目の前に叩きつけたのです。

【聴きどころ】
「あんたは“あるじ”じゃなくて“わらじ”」とまで女房に言われた道具屋ですが、ついに太鼓の売り上げ三百両をもち帰り、女房の前に五十両ずつ並べるシーンは大きな見せ場となっています。「五十両」「あらまあ」「百両」「まだあるかい」「まだはじまったばっかりだ。これが百五十両」「ああ！」と、まだ半分のところで、女房は柱にしがみついてしまいます。日ごろから虐げられた男がついに女房を見返すこの場面には、快哉を叫ばずにはいられません。

【もうひと言】
口の悪い女房をとうとう見返した道具屋ですが、しかしそれまでの女房のバッシングも理由のないものではありません。清盛の尿瓶や岩見重太郎のわらじを仕入れてきてしまう主人に、商いの才がないのも事実なのです。タイトルでもある火焔太鼓は、一般的には大きくて道具屋ひとりで背負っていくのには少々無理があります。ここはそれとは別な「名品」としてとらえるべきでしょう。

[収録：2008年2月24日　イースト21亭（東京・東陽町）]

《携帯電話・スマートフォン（iPhone、Xperia等）、通信機能内蔵タブレット（iPad、GALAPAGOS等）、通信機能内蔵音楽プレーヤー（iPodTouch等）等へは「ダウンロード及び保存」はできません。お手数ですがパソコンでダウンロード後、お手持ちのデバイスへ同期頂き、お楽しみください。》