メルヘンもう半分

あのムーミンにまつわる抱腹絶倒の因縁話（解説付き）

【あらすじ】
浅草の永代橋のほとりにある小さな居酒屋。主は無口な男で、目つきが鋭いが、どことなくはかなげ目をしています。おかみさんは背が小さく、底意地の悪そうな目つきをして、始終ガミガミと文句ばっかりいっていますが、それでも安くてうまい酒を出すので店は大賑わいです。ある晩のこと、客が誰も来ないので外に出てみると雪が降っています。「こんな日に客なんか来やしないよ。それにしてもあたしたちは何のために江戸に出てきたんだい。貧乏するために来たんじゃないよ。人間の国は銭だよ。銭さえあれば好きなことができるんだよ！」さっそくおかみさんは主に毒づき始めました。「わかったわかった。おまえはいつも銭のことばかり言うんだから」閉口した主がもう店仕舞いにしようと戸口に戻ると、おもての暗がりに誰かいます。「すいません、あの、ちょっといいですか」主が店の中に引き入れて驚いた。「おめえ、ムーミンじゃねえか！」

【聴きどころ】
怪談噺『もう半分』を下敷きにしたパロディ落語です。白鳥師は基本的な筋書きを変えず、冒頭からサゲまで古典落語ふうの口調で語るので、江戸の風景の中をアニメのキャラクターたちが動き回っているような、なんとも不思議な今までにない新鮮な感動を味わうことができるでしょう。

【もうひと言】
ムーミン谷の住人たちが白鳥師のくすぐりと一緒に次から次へと古典の世界に登場してくるので、そのたびに会場は爆笑の渦です。恰幅のいい師がムーミンを演じていると本物のムーミンに見えてくるのでした。

[収録：2007年10月27日　お江戸日本橋亭]

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