宮戸川

江戸版ラブコメディー（落語随談付き）

【あらすじ】
小網町（日本橋）の商家のせがれ半七は、趣味の将棋に夢中になり、このところ帰りが遅い。今日も夜ふけにあわてて家に帰りますが、父親に「商人にあるまじき夜遊び日遊び、勘当だ！」と閉め出されてしまいます。向かいの家の娘のお花も歌がるたに夢中になり、やはり閉め出されています。霊巖島（深川）のおじの家に泊まりに行こうとする半七に、お花は一緒に連れて行ってくれと頼みますが、半七は「飲み込み久太」と異名のあるおじさんに勘違いされてしまうのを恐れて取りあいません。霊巖島に着くと、やっぱりおじさんは強引についてきてしまったお花を「オツなのをやっつけたじゃないか！」と早呑み込みをして、ふたりを二階に上げてしまいます。布団はひと組、仕方なくふたりは背中合わせに寝ますが、にわかに激しい雨が降ってきます。鳴り始めた雷がこわくて思わずすがりつくお花に、半七は…。

【聴きどころ】
三三師匠が、堅物の半七と可憐なお花の魅力を丁寧に演じてうまく引き出しています。雷が鳴って、二人が抱き合う階上。一方で、若い二人に刺激されて、お似合いだった若いころの自分たちを思い出す、階下のおじさんとおばさん。二組の老若のカップルの対比がまるでラブコメディー映画のようです。

【もうひと言】
もともと後半がありますが、今ではほとんど上の部分しか演じられません。後半は前半とは雰囲気のちがう芝居噺で、のちにお花が宮戸川で事件に巻き込まれてしまうところからこの演題があります。宮戸川は隅田川の下流部分で浅草川の旧称です。

[収録：2008年3月1日　コア石響（東京・四谷）]

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