ねずみ

ねずみの恩返し　（落語随談付き）

【あらすじ】
伊達家のお膝元・仙台にやってきた旅の男が、客引きの子供に誘われて「ねずみ屋」という宿に泊まります。「虎屋」という立派な宿の向かいにある、蒲団すらない、小さく粗末な宿で、腰の立たない主人と息子のふたりだけで細々とやっています。じつは主人の卯平衛は元は向かいの虎屋の主でした。５年前に女房が亡くなり女中頭のお紺を後妻に迎えましたが、卯平衛が階段から落ちて腰が立たなくなると、番頭に息子ともども邪険にされ、ついには虎屋を乗っ取られてしまったのでした。卯平衛は息子と住んでいた物置を掃除してなんとか商売を始め、住んでいたねずみに義理立てして宿の名前を「ねずみ屋」としたことを旅の男に話します。男がじつは自分は左甚五郎であると明かし、ねずみを彫ってタライに入れて店先に置いて去っていくと、なんとそのねずみが生きているように動き始めました……。

【聴きどころ】
人情噺の部類といえるのでしょうが、虎屋をめぐる一筋縄ではいかない人間模様が入り乱れています。扇辰師匠は直球勝負の演出ながら微妙に影のある卯平衛を語っており、単なる善人の人情噺に仕立てていないところが新鮮です。

【もうひと言】
日光東照宮の“眠り猫”でおなじみの左甚五郎。「ねずみ」は、三代目桂三木助がやっていた広沢菊春の浪曲を「加賀の千代」と交換して落語に移したということです。三木助が好んだネタでしたが、扇辰師匠にとって三代目三木助は大師匠にあたります。

〔収録：2007年7月13日　東京・Again〕

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