国際噺家戦略2008

おそらく21世紀最大の怪作

【あらすじ】
タイガーマスクファンドが「これからの投資の対象は金よりも噺家だ」と目をつけ、落語協会の噺家を買収にかかりました。それを受けてロシアマネーが動き出し、こちらは落語芸術協会の前座をシベリアへ連れて行きます。すると負けてはならじと村上ハンゾウが落語協会の古手の二ツ目を師匠から買いあげました。ダボス会議では「噺家資源開発こそ、もっとも地球に優しい」という発言が受け入れられ、以後、世界中の投資家の関心が噺家に集中、彼らは皆こぞって日本の寄席に行くようになります。こうして一夜にして噺家がグローバルマーケットになったのでした。ドルが没落したアメリカは起死回生を狙って、「アメリカに寄席を作る」と宣言。世界は金本位制度をやめ、噺家本位制度に変わる……となれば、それぞれの国も噺家を所有していないと国家が成り立たないことになり、各国家が噺家の奪い合い。結局、アメリカが新宿末廣亭を押さえると、ロシアが池袋演芸場、そして中国は円楽党を押さえたのですが、それでも世界の混乱はまだまだ続き……。

【聴きどころ】
落語のジャンル分けとしてはこの噺は地噺に分類されます。円丈師は地噺でも新作の傑作を数々ものにしていますが、これほどのスケールを持つ落語はおそらく他に例がありません。円丈師の怪物のような想像力が際立つ作品です。

【もうひと言】
円丈師は常に自作を磨き上げていくことで知られています。この落語もわざわざ『2008』と銘打つだけあって、かつて観客と同業者を唸らせた怪作『国際噺家戦略』にさらなる改良が加えられています。ですから、以前にこの噺を聞いたことがある人も、この2008年版では新たな驚きと笑いが得られるはずです。

[収録：2008年4月27日　「無限落語の会」（東京・お江戸日本橋亭）]

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