鬼の面

古典落語にしか聞こえない新作落語をお聞きあれ！　（解説付き）

【あらすじ】
伊勢屋に奉公している幼い子守娘のお松が、道具屋からおっかさんそっくりのお多福の面をもらいました。喜んだお松は箪笥の引き出しにしまい、夜中に取り出してはおっかさんのつもりで話しかけます。それを知った伊勢屋の番頭、いたずら心を起こして、お多福の面を鬼の面と替えてしまいました。その夜、いつものように引き出しを開けたお松はびっくり仰天、「大変だ！　おっかさんが鬼になった。何かあったに違いない」と、夜中にもかかわらず飛び出していきます。翌日、家を目指して歩くお松にうっそうとした葦の中からいい匂いがただよってきました。大黒屋で300両を盗んだ泥棒たちが焼き飯を作っていたのです。腹ペコのお松は顔に葦の茎が当たらないように鬼の面を被り、ガサガサと匂いのするほうへ進んでいきました。泥棒たちは葦の繁みから現れた真っ赤な鬼の顔を見て腰を抜かし、300両を置いて逃げてしまいます。お松のおかげで300両が戻った大黒屋の主人は大喜び、子守の年が明けたらお松を伊勢屋の倍の給金で雇うと約束します。お松がお礼を言いながらふと鬼の面を見ると……。

【聴きどころ】
根は決して悪くないがちょっと意地悪したい番頭、純真であどけないお松の心根など見事に伝わってくる一席。泥棒は驚かされて収穫なく、番頭もそれなりのお仕置きを受けて、やさしいお松は報われるという気分のいい噺です。サゲがまたなんとも清々しい限り。

【もうひと言】
仮面ライダーの被り物をしたり骸骨踊りしたりなど、初代三遊亭円遊や桂小南ばりの高座を見せるしん平師ですが、自ら「古典落語家に挑戦する」と宣言し、「古典落語にしか聴こえない新作落語」と前置きする通りの噺です。50歳を超えて、新たな領域に創作意欲を燃やす師の情熱を感じさせてくれます。

〔収録：2007年7月4日　東京・お江戸日本橋亭〕

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