らくだ

文左衛門ならではのド迫力！

【あらすじ】
本名は馬だが、乱暴者で「らくだ」と呼ばれる男がフグにあたって死んでしまいました。らくだを訪ねてきた兄弟分の半次がこれを見つけます。弔いを出す金もないので、ちょうど通りかかった屑屋にらくだの家財を買い取らせようとしますが、ろくなものがありません。屑屋は半次に脅かされて、長屋から香典を集める羽目になりました。長屋ではらくだの評判はすこぶる悪く、死んだことがわかると大喜びで、香典を出してくれることに。大家には通夜で飲む酒と肴、握り飯を用意させようとしますが、家賃を一回も入れたことのないらくだです、大家は「冗談じゃない！」と断るのですが……。

【聴きどころ】
使いを嫌がる屑屋を脅かす半次の台詞「おめえ、自分で自分のはらわたを見たことあるか？」。恐ろしい脅し文句です。そんな半次の言うなりになっていた屑屋が、酒を飲み始めるとガラリと豹変します。これまた文左衛門師匠ならではの身の縮むような迫真力。決して明るい噺ではありませんが、くすぐりも随所にほどこされ、くせのある大家など脇役も効いていて、たっぷり楽しめます。今これほど「らくだ」がぴったりくる噺家さんはいないのではないのでしょうか。

【もうひとこと】
図体の大きくてのそのそしている奴にラクダというあだ名がついた……江戸時代にラクダなんて？　とも思いますが、実際に1824年（文政7）には長崎からもたらされたラクダが、両国で見世物になったことが記録にあり、大評判となったそうです。

［収録：2010年３月16日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）］

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