其の九 －自虐の幸福感－

「痛み」があってこその幸福

鯉昇師匠が人生に幸せを感じるときとは？　それは、それまでの苦難が去ったとき。もう「痛み」がなかったら、今が幸せかどうかがわからないんだそうです。愛読する石川啄木の本にもそんな記述がありました。痛みを感じている間は生きている実感がある。お金だって半端にあるよりはないほうが生きている実感があるのだと語ります。だから、有り金は使い果たして常にリセット。落語をやってて感じる喜びもおんなじ。谷底があって初めて這い上がる喜びがあります。含蓄のある話もほろ苦い笑いにくるまれて……。


　瀧川鯉昇の高座といえば、爆笑の落語のみならず、噺に入るまえの、あの「まくら」の愉しさにも定評あり。座布団に腰をおとして「はあ～」と息をもらしただけで客席には笑いのさざなみが広がります。いったいどこまでがホントでどこからがウソなのか、虚実綯い交ぜの鯉昇ワンダーワールドの入口です。そんな鯉昇師匠の不思議の源泉・謎の私生活までたっぷりお聞きしていきます。落語とはやや違う語り口ですが、得も言われぬふわふわの浮遊感はそのまんま。一度聴けば癖になってしまうでしょう。

＊「鯉昇の昼寝まくら」は、毎月第１・第３金曜日に連続配信されます。


次回の「鯉昇の昼寝まくら 其の十　―哀愁の幸福感―」は、2009年10月16日配信します。

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