寄席にも奇妙な物語

ラッキー、生まれながらに志ん生だ！

【あらすじ】
骨壺を焼き場に戻せば骨が死体となり、死体はやがて息を吹き返す……。これは時間が逆流する世界のお話。生まれながらにして落語名人「古今亭志ん生」としてこの世に生まれた男は、稽古をせずとも落語をいっぱい知っている。「ラッキー」とばかりに我が世の春を謳歌します。しかし時間が反転するこの世界は、我々の世界とはまるで違います。酒や食べ物は？　ひげそりは？　さらにやっかいなことに、若返るにつれ、だんだん落語を忘れてしまうのです。そして物語は名人の悲劇的な結末へと突き進むのでした。

【あらすじ】
時間が逆流する不思議な世界……しかしあり得ないはずの世界をありありと描写してみせるのが円丈落語のすごいところ。ことに酒を飲まずに「出す」場面の描写は特筆もので、円丈師は「この芸は古典の奴らには出来ねえ」とも。しかしそれは古典の所作を重視する円丈師匠にしてはじめて可能な、古典を超えた芸なのです。

【もうひと言】
ブラッド・ピット主演の映画『ベンジャミン・バトン　数奇な運命』は、80歳の老人の姿で生まれ、次第に若返っていく男の人生を描いた物語。しかしその映画の11年も前に作られたのが、おなじ主題の新作落語「寄席にも奇妙な物語」なのです。円丈師匠の著作『ろんだいえん』（彩流社）に簡単な解説がありますので、そちらの方も本編と併せてどうぞ。

[収録：2009年6月20日　お江戸日本橋亭（東京・三越）]

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