国士無双

古代中国の兵法、現在（いま）に活きる！（解説付き）

【あらすじ】
何をやってもここ一番というところで勝負に負けてしまうヒカゲ君を友だちが見かねて、「孫子」の150代目の子孫という孫先生のところに連れて行きます。先生は「孫子の兵法」の名言「敵を知り己を知らば百戦危うからず」の理念に基づいて作られたコンタクトレンズをヒカゲ君に授けます。このコンタクトはコンピューターが内蔵されていて、相手の性格・戦い方・能力などを瞬時に見抜き、身につけた者を勝利に導くという凄い代物なのです。その能力を試すべく渋谷の街に繰り出したヒカゲ君は、チンピラに絡まれている一流商社の社長や、お財布をなくして困っていた女性を助けて、一挙に職と彼女をゲット。すっかり有頂天になります。しかし彼はそれが罠であることに気がつきませんでした。

【聴きどころ】
「三国志」が映画（「レッド・クリフ」など）になるなど、注目される古代中国の史実ですが、そのスケールの大きさ、登場人物の魅力が長い間にわたって人を飽きさせない原因でしょう。「国士無双」は前漢の武将・韓信のこと。軍事的能力の優秀さに相反して、政治的振る舞いが苦手で、晩年も失脚しました。歴史を踏まえて、韓信が現代の冴えない若者であるヒカゲ君に投影されているなど、なかなか意味深な噺ですが、有名なＳＦ映画や漫画を彷彿とさせるライトな物語として楽しめます。

【もうひと言】
「孫子」とは中国の有名な兵法書の著者、またその兵法書自体のことをいいます。「国士無双」とは国内にならぶ者のないすぐれた人物という意味ですが、歴史的には劉邦が漢を建国するにあたって、蕭何・張良とともに最大の功労者であった、韓信を指します。有名な「背水の陣」とは韓信のとった兵法で、この噺のなかでも重要なポイントになっています。

[収録：2008年10月30日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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