落語研究室　第9回〈若旦那〉

にくめない若旦那

　立川流という落語会のインディーズにあって、個性と研鑽を競うなかでも、いまや立川流四天王と称される、立川談笑。
ときに、その思いきった古典改作の手法には目を剥くご通家もあるかもしれません。

それでも、そんなボーダーを往還する噺をつくりあげるためには、愛して止まない落語にたいする周到な研究があるはずです。
もちろん、談笑師匠が声高にそんなことを語ることはありません。
いつもチャーミングな高座がわたしたちの前にあるだけです。

「落語研究室」では、そんな談笑師の魅力的な落語の秘密に迫りながら、毎回楽しいおしゃべりが繰り広げられます。
研究員は、談笑師のほかに、年間350回も落語会に足を運ぶという聴き巧者の広瀬和生さんと、三味線の技量とユニークな個性で落語会にひっぱりだこの寄席囃子方の恩田えりさん。
広瀬さんの的を射て軽快な問題提議で、談笑師が大いに語ります。
※毎回締め括りは、えりさんの演奏で名人の出囃子をお楽しみください。



さて、第9回の研究テーマは《若旦那》。
若旦那が登場する噺はけっこうあって、スタジオ内は大盛り上がり。
苦労知らず、世間知らずで、どこかピュアで鷹揚なところが魅力なんですね。
そんな若旦那にも実にいろいろなタイプがあります。
患い系、フェチ系、妄想系、凝り性、奥手……、
ここは広瀬さんの若旦那分析が冴えわたります。

談笑師の若旦那噺「山号寺号」は、際限なく繰り出される駄洒落のシャワー。
えりさんは「船徳」の若旦那のダメさ加減がお気に入り。
かっこつけたり、放蕩したり、与太郎だって働いてるのに若旦那は何もしません。
その鷹揚さで、歌ったり語ったり、かろやかでリズミカルな存在でもあります。

若旦那を語りあううちに、談笑師の頭のなかでは新たな工夫が湧いてきます。
これまでにも、談笑版「明烏」の若旦那は快活でスポーツマンのようなキャラでしたし。
現代人にも届く生き生きした若旦那がまたまた誕生しそうです。

〆はえりさんの演奏で、懐かしの横丁の若様、軽やかで華やかな若旦那の帝王、春風亭小朝師匠の出囃子「さわぎ」でお賑やかに。



■「立川談笑の落語研究室」は、毎月第2・第4金曜日に配信されます。
第10回の研究テーマは「らくだ」です、どうぞおたのしみに！

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立川談笑(たてかわだんしょう)

落語家

1965年、東京都江東区北砂出身。早稲田大学法学部卒業後、92年に立川談志に入門、談生を名乗る。96年、二つ目になり6代目立川談笑を襲名。2005年に真打昇進。06年、国立演芸場の6月上席で、83年の落語協会脱会以後、立川流としては初定席を勤めた。テレビやラジオのレポーターとしても活躍中。代表作といわれる『シャブ浜』など、古典の改作を得意とし、おなじみの定番もただでは済まされぬ爆笑ネタに。独演会は常に完売の人気者である。出囃子は『野球拳』。

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