長屋の花見

「偽装酒」「偽装蒲鉾」「偽装卵焼」で花見を(落語随談付き）

【あらすじ】
貧乏長屋の連中、春もさかりのある朝、大家さんに呼び出されます。店賃（家賃）の催促より他に思いつかないので、おそるおそる大家さんのところに行くと、意外にも「世間から貧乏長屋と陰口たたかれて悔しいから、上野のお山に花見に行ってひとつ景気づけをしようじゃないか。ついては三升の酒、蒲鉾と卵焼も用意してある」という有り難いお言葉。みなは大喜びしますが、大家さんがお酒は番茶の水割りで、蒲鉾は大根の香香（こうこ）、卵焼は沢庵だと種明かしをします。いっきにみなのテンションは下がるものの、行った先で本物の酒をたかろうという了見、毛氈代わりの筵をかついで、半ばヤケで花見に出かけることになりました。

【聴きどころ】
戸板をはずして焚付にしようという凄まじい貧乏長屋だけに大家もすごい。店子の連中に番茶の水割りで酔っぱらうことを命令します。「こんなので酔っぱらえるかよ…」とぼやきながらも、しぶしぶ酔っぱらったふりをしてみせる店子たちがいじらしい。花見の席で呑む番茶の水割りのうすら寒さをリアルに感じさせながらも、三三師匠は歯切れのよい口調で貧乏を笑い飛ばすようにカラッと明るく客席を沸かせます。

【もうひと言】
花の季節の噺として、また貧乏長屋滑稽噺として、定番中の定番です。本物の宴席にたかることに成功する後半があるのですが、最近は中途で切りよく下げることが多いようです。

[収録：2008年3月1日　コア石響（東京・四谷）]

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