佃祭

佃島の水際で、不思議な縁に導かれた人情と笑い　（落語随談付き）

【あらすじ】
佃島の大祭を見物に出かけた次郎兵衛。夕方、慌てて仕舞い船（最終便）に乗り込もうとするが、ある女性に引き留められて船を逃してしまった。実はこの女性、3年前に身投げ寸前のところで次郎兵衛に助けられた人物。命のお礼にと家に招かれた次郎兵衛は、やがて先刻乗り損ねた船が沈んでしまったことを知る。九死に一生を得たと感謝する次郎兵衛。だがその時、次郎兵衛宅では水難の報を受け、次郎兵衛も溺れ死んだと早合点。手際よく葬儀の準備を整えたところに、死んだはずの本人が帰ってくる…。

【聴きどころ】
佃祭りの晴れやかな賑わいを、朗々と描写する五街道雲助さん。祭り好きならずとも、気分が高揚してくることでしょう。また佃島で再会した女性の夫である船頭の親方が、下町流に仁義を切る語り口も実に見事で聴き応えがあります。佃煮発祥の地として知られる佃島。東京オリンピックに合わせて橋がかけられる以前は、東京湾に浮かぶ島でした。

【もうひと言】
雲助さんは、次郎兵衛が自宅に帰って事の顛末を説明する場面で噺を締めくくっています。ところが噺家によっては、与太郎なる者がこの話を聞いて感動し、自分も身投げ志望の女を街で探し出すという続編もあり。身投げに見えたが飛んだ勘違いであったり、女が必要だという銭が手持ちで賄えなかったり、改作の仕方がそれぞれに異なるところもまた落語の面白さです。

［収録：2007年10月2日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）］

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