二番煎じ

夜回りのおたのしみ、酒という名の煎じ薬

【あらすじ】
冬の夜。町内の旦那衆があつまって、夜回りをしています。組を二手にわけ、まずは一番手が出発。拍子木はたもとの中で打つ、金棒は引きずる、「火の用心」は謡曲と、なんともいい加減な夜回りですが、どうにか終えて二番手と交代しました。火にあたって冷えたからだを暖めるうち、ひとりがこっそりと酒をだします。ふくべに入ったままではまずいので、土瓶にうつして酒盛りがはじまりました。料理も豪華に猪鍋とくれば、がぜん宴も盛り上がります。そこへ現れたのが見回りの役人。あわてて土瓶や鍋を隠しますが、役人に見つかってしまいました。酒は「風邪の煎じ薬」、猪鍋はその「口直し」と、とっさのいいわけをしますが、役人は自分も風邪を引いているからと土瓶の酒を注がせます。役人は「寒い折りには何よりの煎じ薬だ」と、何杯も酒を飲み、猪鍋をつつくのでした。

【聴きどころ】
寒い夜、湯飲みでいただく熱燗の酒のなんともうまそうなこと。無類の酒好き八代目三笑亭可楽師の、みごとな飲みっぷりがなんといっても聴きどころです。さらにつまみの猪肉と汁のたっぷりしみ込んだネギが舌の上で踊るさまときたら……。もちろん、こうしたアツアツの冬の楽しみが生きるのも、さむーい夜回りのみごとな描写があってこそなのは、いうまでもありません。

【もうひと言】
噺に出てくる「猪肉は熱いものを食べてもやけどをしない」というのは実際にある言い伝えで、猪肉は脂肪分が少ないからだともいわれますが、真偽のほどは定かではありません。この噺を聞いて猪鍋を食べようという御仁は、くれぐれもやけどにご注意下さい。

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