落語研究室　第13回〈幽霊〉

暑い夏には幽霊の噺でひんやりと

　立川流という落語会のインディーズにあって、個性と研鑽を競うなかでも、いまや立川流四天王と称される、立川談笑。
ときに、その思いきった古典改作の手法には目を剥くご通家もあるかもしれません。

それでも、そんなボーダーを往還する噺をつくりあげるためには、愛して止まない落語にたいする周到な研究があるはずです。
もちろん、談笑師匠が声高にそんなことを語ることはありません。
いつもチャーミングな高座がわたしたちの前にあるだけです。

「落語研究室」では、そんな談笑師の魅力的な落語の秘密に迫りながら、毎回楽しいおしゃべりが繰り広げられます。
研究員は、談笑師のほかに、年間350回も落語会に足を運ぶという聴き巧者の広瀬和生さんと、三味線の技量とユニークな個性で落語会にひっぱりだこの寄席囃子方の恩田えりさん。
広瀬さんの的を射て軽快な問題提議で、談笑師が大いに語ります。
※毎回締め括りは、えりさんの演奏で名人の出囃子をお楽しみください。



第13回のテーマ、夏と言えばやっぱりこれ、〈幽霊〉です。
みどりの黒髪おどろに乱し……、
女の幽霊も多いけれど、落語では男の幽霊がけっこう出てきますね。
毎年8月に催される圓朝まつりは暑いなかにも盛況ですが、
谷中の全生庵では、圓朝蒐集の幽霊画が公開されますよ。

因縁話、牡丹灯篭、真景累ヶ淵……、今回は談笑研究員の解説で、
研究室にふさわしいアカデミックな雰囲気で始まります。
怪談噺では、人がじゃんじゃん死んでいきます。
「因縁という名のご都合主義だね」

今夏には「牡丹灯篭」を2時間に凝縮して披露する予定の談笑師。
「お盆に。二日間でＡサイドＢサイドでやりますよ～」
「お祓いとか行くんですか？」
「いかな～い！」
なぜか幽霊の話は、盛り上がりますね。

落語に出てくる幽霊はあまり怖くありません。
可愛い女心の幽霊は「三年目」。
美人の幽霊がハジける様子が面白い「お菊の皿」。
「へっつい幽霊」では幽霊がサイコロをふる手つきが愉快です。
最近作の談笑版では、幽霊が博打に勝ってしまう。
でもって最後にはなんと人情噺になってしまいます。
八代目可楽が得意とした「反魂香」も談笑版になると
「ガチで泣ける噺ですよねえ」と広瀬さん。

さて〆は、幽霊が出たのを見たよっていうところから始まる「野ざらし」。
「野ざらし」といえばこの人、独特の唄い調子が心地よく楽しい、
三代目春風亭柳好の出囃子「梅はさいたか」でお別れです。



■「立川談笑の落語研究室」は、毎月第2・第4金曜日に配信されます。
第14回の研究テーマは「妾馬」です、どうぞおたのしみに！

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立川談笑(たてかわだんしょう)

落語家

1965年、東京都江東区北砂出身。早稲田大学法学部卒業後、92年に立川談志に入門、談生を名乗る。96年、二つ目になり6代目立川談笑を襲名。2005年に真打昇進。06年、国立演芸場の6月上席で、83年の落語協会脱会以後、立川流としては初定席を勤めた。テレビやラジオのレポーターとしても活躍中。代表作といわれる『シャブ浜』など、古典の改作を得意とし、おなじみの定番もただでは済まされぬ爆笑ネタに。独演会は常に完売の人気者である。出囃子は『野球拳』。

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