時うどん

『時そば』とはまるで違う笑いが満載

【あらすじ】
腹を空かせた二人組の男。何か食べたいのですが、二人の持ち金を全て合わせても十五文しかありません。そこで兄貴分の方が、それではうどんを食べようと言い出します。しかし、大坂の屋台のうどんは昔から十六文と値段が決まっていますから、持ち金の十五文では一文足りない計算となります。そう言って弟分の方が兄貴分に反論すると、そこは俺が何とかしてやるからと言って、結局支払いの段になって合間に時刻を尋ねることで、うまく一文誤魔化してしまいます。これは面白いと思った弟分は次の日、同じことをやってやろうとするのですが……

【聴きどころ】
『時うどん』は『時そば』の蕎麦をうどんに代えただけだと思っている人が多いようですが、実は噺の大所がまるで違っています。『時そば』があくまでも一人の客が蕎麦屋を相手にするのに対して、『時うどん』は最初二人の客でやったことを次の日には同じことを一人でやるところに眼目があります。そして、笑いの量はやはり『時そば』よりも上方落語の『時うどん』に軍配があがりそうです。

【もうひと言】
二八蕎麦、二八うどんの値は昔は十六文と決まっていましたが、これは言うまでもなく具ののっていないもり蕎麦、かけ蕎麦、素うどんの値段です。『時うどん』では登場人物は素うどんを食べているので十六文で問題ないのですが、東京の『時そば』ではしっぽく蕎麦を注文するのですから、値段が十六文というのは時代考証としては間違っていることになります。『時そば』は三代目柳家小さんが上方の『時うどん』を東京に移したものですが、さすがに値段の方は噺のように上手くごまかしきれなかったようです。

[2008年12月6日　横浜にぎわい座（横浜・桜木町）]

《携帯電話・スマートフォン（iPhone、Xperia等）、通信機能内蔵タブレット（iPad、GALAPAGOS等）、通信機能内蔵音楽プレーヤー（iPodTouch等）等へは「ダウンロード及び保存」はできません。お手数ですがパソコンでダウンロード後、お手持ちのデバイスへ同期頂き、お楽しみください。》