風呂敷

男の哀愁を風呂敷に包んで

【あらすじ】
夕暮れ時、女が駆け込んできます。「兄さん、大変な事になっちゃったんですよお、血を見るんじゃないかと思って…」と言うことが穏やかじゃありません。男は毎度もめ事を持ちこんでくる女にあきれますが、他ならぬ弟分夫婦のこと。放っておくわけにもいきません。わけを聞くと、亭主が帰りは遅くなると言って横浜に行った。夕方になって新さんが亭主を訪ねてきて、家で一緒にお茶を飲んでいると、亭主が思いのほか早く帰ってきた。亭主は大変なやきもち焼きなので、何かあってはいけないとあわてて新さんに三尺の押し入れに隠れてもらったが、酔っぱらった亭主が押し入れの前に陣取ってしまい、寝ずにクダを巻いているので困っている……。男は女にさきに帰らせて、風呂敷を持って弟分の家に行きます。弟分のところに行くと、弟分はへべれけで、わけの分からないクダを巻いています。

【聴きどころ】
兄貴分が風呂敷を小道具に使ってうまくその場を収めます。後半は仕方噺（仕草で笑わせる噺）で、サゲに至るくだりも滑稽です。前半の兄貴が女房に説教する場面のばかばかしさも特筆もの。結果的には女房が兄貴分に頼み込んで、間男を逃がしてしまうのですから、何も知らない弟分はますます哀れ。女房の一人勝ちです。

【もうひと言】
志ん五師の大師匠である五代目古今亭志ん生師の十八番でした。亭主の留守に間男を引き入れたら、案に相違して亭主が早く帰ってきた……。落語にはこうした筋は数多く、「紙入れ」などにも同様の設定がありますが、「風呂敷」では前半部分の濡れ場が演じられることは少なく、おかげで戦時中の禁演落語の指定にもひっかからなかったとのことです。

[収録：2008年7月16日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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