夢金

雪夜の「隅田川」、さてどうなる。（落語随談付き）

【あらすじ】
たいそう雪の降る、しんとした晩です。船宿の二階から「百両欲しい～、二百両欲しい～」と大きな声が聞こえてきます。欲張りな船頭の熊蔵の寝言です。呆れた親方が諫めています。「静かにしねえか！金勘定していると間違えて間抜けな物盗りが入ってきたらエライことだ」。…とそこに年の頃三十二、三の一癖も二癖もあろうという風貌の侍と、十七、八の美しい娘が船宿を訪ねてきます。侍がいうには、兄妹で浅草に芝居見物に来たが、この大雪で難渋している、深川まで屋根船を出してほしいという頼み。寒い夜のこと、一度は仮病で断りますが「骨折り酒手（さかて・心付のこと）は十分に遣わす」と言われ、欲の張った熊蔵は舟を出します。熊蔵は舟を漕ぎながら、なかなか酒手をもらえないので苛立ち、船をわざと揺らしたり、あの手この手を使ってしつこく酒手をせびります。ところがその熊蔵に侍は「欲の張った貴様を見込んで相談したいことがある」と持ちかけてきます。

【聴きどころ】
欲張りな船頭熊蔵と、人相の悪い侍、金持ちのお嬢様らしき可憐な娘。何かが起こりそうな緊張感をはらみながら、雪の降る夜の隅田川を舟が進んでいきます。案の定、侍の企みに熊蔵の欲が絡んで話は凄みを帯びてきますが、意外な方向に転じます。

【もうひと言】
雪の夜、墨絵のような隅田川を舞台にまるで二番目狂言のような噺ですが、もともとのサゲはちょっと下がかったもの。馬石師匠のメリハリのきいたよく通る声は登場人物の緊迫したやりとりに似つかわしく、丁寧に語って最後まで崩れません。

[収録：2007年12月14日　コア石響（東京・四谷）]

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