粗忽長屋

おまえはもう死んでいる……（落語随談付き）

【あらすじ】
そそっかしい奴の兄貴分が浅草の観音様の脇を通ると、黒山の人だかり。聞くと「行き倒れ」だといいます。見物人の股ぐらをくぐって中へ入りこむと、人の輪の中にゴザが置いてあります。兄貴分、何を勘違いしてか、嬉しそうに「今から始まるんですか？」。立合人は呆れて、とにかくゴザをめくって見てくれというので、よく顔を見てみると、長屋の友達・熊ではありませんか。知り合いだったら遺骸を引き取ってくれと頼まれると「今から当人を連れてきましょう」と長屋へと帰ってきます。兄貴分は家でぼんやりしている熊に「おめえは観音様の脇で……死んでるよ」と告げます。「そうお？　そんな心持ちはしねえけどなあ？」と半信半疑だった熊も、説得されるうちにその気になって、二人で熊の遺骸？を引き取りに行くことになりました。

【聴きどころ】
不条理感際立つこの古典、自分の死体を引き取りに行く男なんて怪談かＳＦにでもなりそうですが、喬太郎師によってテンポのいい、からっとした笑い話になっているところが出色です。あちこちにちりばめられた絶妙なクスグリに客席は爆笑、師匠もじつに楽しそうに、のびのびと演じています。

【もうひと言】
寛政年間（18世紀末）から演じられた古い噺のようです。「猫が炬燵の中に馬糞を垂れた」「ぶち殺して熊の肝を取ってやれ」「ナニ、猿ではあるまいし」という古いクスグリも残っているとのこと（安永4「聞童子」）。

[収録：12月14日　コア石響（東京・四谷）]

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