船徳

夏の定番噺、びっくりのサゲ　（落語随談付き）

【あらすじ】
質屋の若旦那の徳三郎、家を勘当され、馴染みの船宿に居候していますが、船頭になると言い出します。日頃世話になっている若旦那のこと、周囲は真剣に教えるわけではありませんが、本人はすっかり一人前になったつもりでいます。浅草・観音様の四万六千日、暑いので船で大川（隅田川）を上って大桟橋まで行こうと、船嫌いの友人を連れた馴染みの客が船宿にやってきますが、みな出払って残っている船頭は徳三郎だけ。心配する女将をあとに張り切って船を漕ぎ出す徳三郎ですが、いきなり竿は落とすわ、石垣に寄せてしまうわ……。

【聴きどころ】
夏を代表する噺のひとつですが、鯉昇師匠の工夫が随所にあります。船宿の二階で寝てばかりいる若旦那は、遊び人というよりも“引きこもり”という言葉がぴったりきそうな雰囲気で、親しみのわくキャラクターです。若旦那の実家が質屋というのも珍しい設定です。この設定がサゲに活きるのですが、そのサゲが他では聞かれない珍しいもので、普通のヴァージョンを聞き慣れているとちょっとびっくり。初代三遊亭円馬が演じたサゲとのことです。

【もうひと言】
「四万六千日」は、七月九日・十日にあたり、浅草寺でほおずき市があります。一升の米は四万六千粒あるので、一升と一生をかけて、この日にお参りをすれば一生ご利益があるということです。大桟橋は駒形橋の西詰めにあったらしく、そこから船をおりて浅草寺に参詣しました（大桟橋の位置については、もう少し上流の山谷掘近辺だという説もあります)。


〔収録：2007年7月13日　東京・Again〕

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