遥かなるたぬきうどん

映画みたいな臨場感！　師の代表作のひとつ　（解説付き）

【あらすじ】
カシーンッ！　カシーンッ！　アイガー北壁の鉄のように硬いブルーアイスにピッケルを突き刺しているのは、東京足立区のうどん屋、長寿庵の店主。彼はなぜかひとり、クーラーボックスを入れた大きなリュックを背負い、完全防寒服に身を包んで、ヨーロッパ最高峰、標高4756ｍのマッターホルンの山頂を目指していました。その山頂で店主を待つのは、店の常連客の山本氏。店主は、３日もキャンプを張って出前を待つ山本氏に“たぬきうどん”を届けようとしているのです。しかし、それは二人の命をかけた熱～い闘いのほんの始まりにすぎないのでした……。

【聴きどころ】
ズバリと分かる簡潔なコトバ、挿入される生々しい擬音、円丈師が描くシーンには見事なまでの臨場感があります。店主と客とが交わす“べらんめえ調”の会話も小粋です。ラジカルな笑いと男のダンディズムが一遍のハードボイルドムービーのように展開されます。

【もうひと言】
小道具遣いにもご注目。ピッケル代わりに扇子を1本ずつ両手に持って演じながら、やおら懐から2本取り出し、計4本出して客を沸かせます。定席でもよくパソコンのマウスを出すなど、モノ遣いの名手ならではの一席です。

〔収録：2007年5月8日　東京・お江戸日本橋亭〕

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