宿屋の富

一文無しが富くじ当てて大騒動！　（落語随談付き）

【あらすじ】
江戸馬喰町のむさ苦しい宿屋にひとりの客がやってきました。宿の主に向かって、家には数え切れない金蔵があって、商人や大名に何十万両も貸していて部屋中利子の金だらけ、賊が山ほど押し入ってきたときも、千両箱をたったの80個しか持っていかないからがっかりしたとか、大きなことばかり並べ立てます。これは上客だと大喜びのあるじ、副業で売っていた富の札（現在の宝くじのようなもの）を一枚一分で売りつけます。明日が富の当日で、当たれば千両。客は、もうこれ以上金はいらないからと、当たったら半分の五百両を主にやると約束します。ところがこの客、やっぱり金持ちなんかじゃありません。なけなしの一分を主に取られて、もはや一文なし。翌日、宿を出て途方に暮れながら湯島天神に行って貼り出してある一番富の番号を見ると、子（ね）の千三百六十五番。客が懐から札を出してよく見ると、子の千三百六十五番……。

【聴きどころ】
客が宿の主に大ぼらを吹くところもおかしいのですが、欲の皮の突っ張った連中がわれこそ千両を当てようと富の会場に集まって、手前勝手な夢物語を語る場面が爆笑ものです。その後、自分の札が当たって動転する客と宿の主双方の心理描写が絶品で、遊雀師の腕がさえています。

【もうひと言】
上方噺の「高津の富」がもとネタ。この噺は、三代目小さんの東京型とほぼ原作通りの大阪型にわかれ、三代目桂三木助や五代目柳家小さんは東京型、五代目古今亭志ん生は大阪型で演じていました。遊雀師はくすぐりがふんだんに入っている大阪型をベースにしています。

〔収録：2007年4月28日　東京・文鳥舎〕

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