芝浜

意外にも正統派

【あらすじ】
冬の寒い明け方、毎日飲んだくれて仕事に行かない魚屋の勝は、女房に「おまえさん、仕事をしておくれよ」と泣きつかれてしぶしぶ浜に出かけます。女房が用意していてくれた飯台をかつぎ、河岸に向かいますが、まだ夜明け前。浜には誰もいません。暇つぶしに一服していると足下に汚い財布を見つけました。拾い上げて中を見ると、金がたくさん入っているではありませんか。大急ぎで帰って女房と数えてみると、四十二両もあります。喜んだ夫婦は友だちを呼んでどんちゃん騒ぎ。ところが翌朝、女房に「金が一文もないから仕事に行っておくれ」と起こされます。勝が「財布の金があるじゃあねえか」というと、女房はそんな金はどこにもないと言います。「夢を見ていたのか」。勝は今度こそ心をいれかえて仕事に励みます。そして五年後の大晦日の晩……。

【聴きどころ】
談笑師匠は言わずとしれたこの大ネタを、きめ細かく演じてみせます（ところどころに師匠ならではのくすぐりは忘れていませんが）。冬を舞台にして、夫婦の情をしみじみ感じるのにこれ以上の噺はないといってもいいでしょう。前半と後半では寒さも違って感じられます。談笑師匠、夫婦の情を軸にしていることは正統派といってもいいくらいなのですが、ひねりをきかせて、ちょっとスリリングな心理劇風に仕立てています。サゲにも洒落た工夫がしてあります。

【もうひと言】
落語の祖・三遊亭円朝が三題噺で作ったともいわれますが、なんといっても三代目桂三木助の口演が有名です。数々の名演がある中で、談笑師匠にはこれをもとにした怪作『シャブ浜』があり、こちらもラジオデイズで配信中です。両方を聴いてみると、師匠の『芝浜』に寄せる愛情が並々ならぬ事がわかります。

[収録：2009年10月23日　牛込箪笥区民ホール（東京・神楽坂）]

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