なんばん

六十三歳の天才が声を限りに叫ぶ

【あらすじ】
中高年の男性とその娘婿の二人が、久しぶりに一緒に食事をしようということになりました。ところが、二人とも過激なぐらい強情な上に支離滅裂なこだわりを持っているため、どの店に行くのかということすら簡単に決めることができません。ようやく蕎麦屋に入ることになったものの、そんな二人がすんなりと注文の品を決められるはずもなく、食をめぐる二人の会話はどんどん錯綜していって……。

【聴きどころ】
円丈師は「将来落語史が書かれる時、新作落語の歴史は円丈以前、以後に分類されるだろう」と言われるほどの新作落語の大家です。しかし、その地位に安住することなく今なお新作落語を作り続けています。その円丈師の新作ネタおろしがこの『なんばん』。食を巡る対話という一見ありふれた素材も、円丈師の手にかかるととてつもないシュールな世界へと変化します。この作品を聞くと、円丈師の斬新な発想で頭の中を掻き回される快感を味わうことができます。

【もうひと言】
この音源の収録の日は奇しくも円丈師匠の誕生日でした。円丈師はこの日で六十三歳。ご当人は高座でも自嘲的に六十歳を過ぎた人間の限界についていろいろとおっしゃっていますが、どうしてどうして。そもそも「老人」で、これほど張りのある声を出せる噺家さんなどいません。円丈師匠、まだまだご壮健と察しました。

[収録：2007年12月10日　お江戸日本橋亭「無限落語の会」（東京・三越前）]

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