粗忽長屋

死して屍ひろうものオレ？

【あらすじ】
ある男。浅草の観音様にお参りした帰りに、境内の脇を通ると黒山の人だかり。野次馬根性を発揮してのぞいてみると、そこに横たわっていたのは行き倒れでした。顔をあらためてほしいと言われ、見てみると「熊のやろうだ！」。行き倒れは、同じ長屋に隣り合って住んでいる熊だというのです。差配に引き取りを頼まれると、男は「当人を連れてきますから引き取らせましょう」と提案します。あっけにとられる一同を残して、男は急ぎ長屋へもどります。部屋で寝ていた熊をたたき起こし「お前は死んだんだよ」と言い聞かせると、だんだん熊の方も自分が死んだ気になってきて……。やがて行き倒れのところに戻った男と熊は、さらなるそそっかしさを発揮するのでした。

【聴きどころ】
主要な登場人物は、まめでそそっかしい人と無精でそそっかしい人、そして差配のたった三人で構成された、ミニマムで無駄のない名作落語です。三人のうちふたりが粗忽者のキャラクターですから、両者のそそっかしさを際立たせる上でも、差配の常識人ぶりが重要になってきます。強烈な粗忽者ふたりの影で目立たない存在ですが、文左衛門師演じる差配の揺るがない「フツーさ」にもぜひ注目していただきたい一席です。

【もうひと言】
寄席などでも比較的口演されることの多い「粗忽長屋」。当ラジオデイズでも複数の落語家が演じています。ぜひ聞き比べてお気に入りの噺家さんを見つけていただきたい落語ですが、文左衛門師の「粗忽長屋」に出会えたあなたは超ラッキー。大胆な顔にして繊細な芸の、文左衛門ワールドへの入り口としてぜひお聞きいただきたい一席です。

[収録：2009年7月25日　文鳥舎（東京・三鷹）]

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