にんじん

子供だって、やるときゃやるぞ！

【あらすじ】
新しいゲーム機を買ってもらえなくて家出した小学４年生のタダシ。ある家の窓からつまらなそうに外を眺めている小さな男の子、ヨッちゃんを見つけて声をかけます。タダシが欲しかったゲームを持っていることがわかって、タダシはヨッちゃん家に上がり込みます。広いし、最新のゲームから何から、タダシの家にはない物がいっぱい。「おまえんとこ、すっげーな！」でもヨッちゃんは浮かない顔。ママが夕方から「バー・ベラミ」にお仕事に出かけ、ひとりでお留守番をしていて寂しいのです。タダシは「バー」のわからないヨッちゃんに「バーというのは暗いところで、そこでママはゲロ吐きオヤジたちと戦っているんだぞ！」と説明してあげます。それを聞いて急に心配になったヨッちゃんはママを助けに行くと言い出します。最初は気乗りしないタダシでしたがヨッちゃんの決意は固く、お金のないふたりは５駅先のバーを目指して歩き出します。

【聴きどころ】
「バー」という「ヨッちゃんのママとゲロ吐きオヤジたちの戦場」をめぐる子供同士の会話は傑作です。タダシは年かさで知ったかぶりをしていますが、自分だってまだまだ子供。ほんの少し虚勢を張ったおかげで窮地に陥ってしまうのですが、こんな瞬間はだれにでも経験があるのでは。それが師匠の新作のテーマのようです。

【もうひと言】
郊外の私鉄沿線を舞台にしたと思しき少年の小さな成長譚です。あまりクスグリもなく、直球勝負の演出です。師匠が噺のヒントにしたのはスティーヴン・キング原作の映画「スタンド・バイ・ミー」（1986）とのこと。

[収録：2008年11月8日　関交協ハーモニックホール（東京・西新宿）]

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