三味線栗毛

平成20年度ＮＨＫ新人演芸大賞受賞の実力派が格調高い人情噺を

【あらすじ】
酒井雅楽頭（さかい・うたのかみ）という大名には三人の子がありました。長男は与五郎、二番目は娘で、三番目は角三郎といいましたが、どういうわけか父親はこの角三郎を嫌い、大塚の下屋敷に家来同様の処遇で住まわせていました。しかし角三郎は生来、腹の大きい人間でそんな処遇に不満をもつでもなく、ふらっと町歩きなどをし、夜は書見をして過ごしていました。しかし夜の書見は肩が凝るので、角三郎の身を心配した中間（ちゅうげん）の清水吉兵衛が通りかかった盲目の按摩、錦着（にしきぎ）に療治をさせます。この錦着が療治の傍ら面白い話しをするので角三郎が気に入り、ひいきにします。ある日錦着が療治をしながら「だんなさまの骨組みはお大名になる方の骨組みです」と申し上げると、角三郎はもし自分が大名になったら錦着を盲人で一番位の高い「検校」にしてやると約束します。喜ぶ錦着でしたが、その後病で寝込んでしまいます。いっぽう角三郎は…。

【聴きどころ】
大名の跡取りと、市井の按摩の心の交流を描いた格調ある落ち着いた噺です。身分がありながらも苦労人で、庶民の心がわかる若い角三郎が凛々しく、また目が不自由だが必死に生きる錦着のいじらしさが伝わってきます。感情的にならず淡々とすすむゆえに、後半の錦着の境遇がいっそうの悲しみを誘います。

【もうひと言】
噺のタイトルの由来「栗毛の名馬に三味線と名付ける」（三味線“馬”に唄“雅楽頭”が乗る）というエピソードを噺の最後にもってくるのが本来のサゲになっていたようですが、王楽さんは冒頭に持ってきています。

[収録：2008年12月2日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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