葬儀屋さん 【at 西新宿】

コテコテ上方爆笑人間ドラマ

【あらすじ】
齢八十八の父親が亡くなりました。集まった三人の兄妹の誰が残った母親を引き取るか、遺産がらみで早速もめます。側でじっと聞いていた葬儀屋さんが「いい加減にしなはれ」と兄妹をいさめ、葬式の段取りを説明しますが、この兄妹は極めつけの脳天気。「菩提寺」を「ポタージュ」と聞き間違え、宗旨は何かと聞くと「万葉集」と答えます。あげくに仏式はお金がかかるとわかると、安く済みそうなキリスト教式にしたいなどと言いだす始末。それでもなんとか翌日、告別式もつつがなく進み、お葬式のクライマックスである「出棺」に。すると我がちにお棺に駆け寄る兄妹、いかに自分が故人と愛情で結ばれていたか、アピールし始めて収拾がつかなくなります。

【聴きどころ】
師匠の手になる創作落語。特に事件が起こるわけではありません。亡くなった父親のお葬式という、ごく平凡な日常の延長です。誰もが経験するお葬式ですが、ふだん疎遠になっている親族それぞれの思惑が交錯する様子は誰でも多かれ少なかれ思い当たる節があるのではないでしょうか。そんな「普通のお葬式」を福笑師匠がきめ細かく、なおかつ滑稽に描いていて、師匠の人間観察の鋭さを感じさせます。三人兄妹が父親のお葬式で勝手な振る舞いをする様子は古典落語の「棒鱈」、また冷静な葬儀屋が式の段取りで兄妹のアホぶりに呆れるところは「代書屋」を思い起こさせます。

【もうひと言】
音声だけではわからないのですが、福笑師匠は上下（かみしも）を付けないで人物を描き分ける離れ業の持ち主。それが独特の間を作り上げています。「葬儀屋さん」では兄妹がてんでにお棺の中の父親に語りかけたりするシーンなど、まさにその技が活きます。

[収録：2008年11月8日　関交協ハーモニックホール（東京・西新宿）]

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