第4回 この国はどう歩むのか－『大学の国際化、グローバル人材育成』を論ずる ×鷲田清一（全巻セット）

この国はどう歩むのか－『大学の国際化、グローバル人材育成』を論ずる

200人の開場が満杯になった、熱気あふれる対論である。

テーマは、教育現場における、グローバル人材育成への圧力について。
もともと、大学はグローバルかつ普遍的な学知を学ぶ場であった。いま、ことさら大学のグローバル化が叫ばれる理由は、ビジネスのグローバル化に対応する人材供給の場としての大学という視点からのものであろう。しかし、それは本質的に学問とは無縁の、政治的あるいは経済的な功利主義からくる一方的な主張にならざるを得ない。

登壇のふたりは、この「大学のグローバル化」そのものについては自明のことと捉えるが、当今の「グローバル人材」なるものがかなり怪しげなものであると批判する。
単なるコミュニケーションをとるための語学に関してならば、リンガフランカとしての英語は、ブロークンでもかまわないだろう。明治時代以来繰り返し現れてきた英語公用語論は、脱亜入欧の島国根性が背景にあった。言語は、本来的に単なるツールであることを超えて、文化的資産であり、それなくしては国家の知のアーカイブに分け入ることができない。日本語が生成されてきた歴史は、まさに日本という国民国家の生成の歴史であり、これを安易に改変することは、将来に禍根を残すことになるだろう。

また、経済界からグローバリズムに阿る提言が相次ぐことに対して、経国済民の思想の欠如した「株式資本主義」と、「国民国家」が賞味期限間近となっているという視点から、グローバリズム批判を展開している。

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