第6時限「移行期的混乱」（全巻セット）

総論：成長の夢と均衡への転換

日本が直面する「移行期的混乱」をどのようにとらえ、どのように潜り抜けたらよいのか。文明史的な難題に立ち向かうために何が必要なのかを探る100分。

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最終回は、文明移行期にあらわれる「解きがたい問題を解く」というテーマでのお話。ほとんどの問題は、AかBかどちらかを選べという二項対立の形で提出されます。原発推進か原発撤退か、TPP開国か鎖国か、対米従属か対米自立かといったような二項対立的な設問にはあらかじめ答えが用意されています。

こういう設問は、複雑系に属する生の現実のさまざまな次元を削り取り、単純化し、縮減した線形モデルにすぎません。そして、この設問の中にすでに人々をひとつの回答へと誘導するバイアスがかかっています。

大切なことは、生の現実は二項対立で解き明かせるような単純なものではない、複雑系に属しているということです。上記のような二項対立による問題が提示された場合には、何故このように問題を単純化したのか、この単純化によって何を実現しようとしているのかというように、問題の次数をひとつ繰り上げて考える必要があります。

それは、同時に自分の頭で考えることで、もう一つの問いを立てることでもあります。

この日のもう一つのテーマは縁をめぐってのお話でした。「有縁」と「無縁」。無縁とは、まさに地縁、血縁から切り離された場であり、このような場から市場が立ち上がり、貨幣が生まれてきたという網野史学が紹介されました。この日の客員教授である中島岳志さんとの対談もこの「無縁」をめぐっての話となり、聴衆の理解の助けになりました。

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