戦後落語家論3

古典はすでにオワッテル。

　新作落語を作り続けることすでに300本以上という三遊亭円丈師匠。しかし数は問題ではない、ウケる作品がいくつあるかが重要だとご本人は語ります。『悲しみは埼玉へ向けて』はかならずウケる鉄板ネタだという本田久作さんのことばに、対談はしばし足立区談義へと脱線。
　なんとか話を戻して話題はついに新作と古典の問題へ向かいます。「古典はもう終っている」という円丈師。なぜ古典ではなく新作なのか、そのわけを自作の『手紙無筆USA』『一ツ家公園ラブストーリー』などを例にあげつつ、“共感”をキーワードに論理的に説明していきます。そしてこれから古典を演ずる者にも最低限必要な、ある能力が示されるのでした。
　これまで「クリエーターが一番えらい」と表現者の優位性を説いてきた円丈師ですが、最後に芸の部分、演者としての円丈が語られます。「円丈のやる女はなかなかいい」という円丈師に、本田さんは『月のじゃがりこ』（ラジオデイズにて好評発売中）の例をあげてその意外な魅力を認めます。
　「いま円生が生きていたら円丈をどうみるだろう」と本田さん。はたして円丈は円生を継ぐのか継がないのか？　それに対する円丈師の答えで、戦後落語家論から円丈論となってきた対談は幕を閉じます。

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三遊亭円丈(さんゆうていえんじょう)

落語家

1964年に三遊亭円生（六代目）に入門し、「ぬう生」となる。69年に「ぬう生」のまま二つ目に昇進。78年の落語協会分裂騒動の際に、円生と決別して落語協会に残留する。同年「円丈」を襲名して真打に昇進。71年ごろから新作落語の旗手として活動を続け、今や実験落語の教祖的存在である。マッターホルンの山頂から出前を頼まれたうどん屋の顛末を描く「遥かなるたぬきうどん」など、ナンセンスなシチュエーションから生まれる笑いをじっくりと語り、観客を爆笑の渦に叩き込んでいる。86年には落語協会分裂騒動の内幕を実名で書いた『御乱心』がベストセラーを記録。96年には日本参道狛犬研究会を設立し、会長に就任。全国各地の寺社を巡るフィールドワークを行うなど、精力的に活動している。本名・大角弘、1944年、愛知県生まれ。落語協会所属。

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